「行動を変えるデザイン」の学びと感想
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「行動を変えるデザイン」という本を読んだので、学んだことと感想を記しておく。
読む目的
以下を達成すること。
- 行動変容のために、データとデザインをどうシステムに組み込むべきか理解する
- 行動変容を促すデザインの理論的な背景知識を得る
行動変容デザインの流れ
- 心の働きが行動決定にどう作用するのか、またそれが行動の変化にどう関係するかを理解する
- 企業やユーザの目標を踏まえて変えるべき行動を探索する
- 設定した行動に向けて、プロダクトをデザインする
- 慎重な測定と分析に基づいて、プロダクトの効果を改善する
行動変容デザインに必要なもの
- 行動研究(行動経済学と心理学)
- プロダクトデザインの専門性(プロダクト開発と UX)
- データ分析(定量と定性データの分析)
行動を変える効果的なプロダクトをつくるために必要な 3 つのこと
- 人が実際に好むものをつくれる、プロダクトとデザインの専門スキルがあること
- ユーザの行動とそれに影響を与えるやり方をはっきりと理解すること
- 徹底的にプロダクトをテストし、データが教えてくれる事実に耳を傾けること
挙げられていた行動経済学者・心理学者
- Richard Thaler - Wikipedia
- Daniel Kahneman - Wikipedia
- プロスペクト理論
- ヒューリスティックとバイアス
- ピーク・エンドの法則
- B. J. Fogg - Wikipedia)
- フォッグ式消費者行動モデル
感想
目的の振り返り
読む目的を振り返ってみる。
- 行動変容のために、データとデザインをどうシステムに組み込むべきか理解する -> 達成
- 行動変容を促すデザインの理論的な背景知識を得る -> 未達成
「行動変容のために、データとデザインをどうシステムに組み込むべきか理解する」
この点に関しては、「行動変容デザインに必要なもの」を用意し、「行動変容デザインの流れ」に沿って実践すれば、再現できると感じた。 一方で、行動研究・プロダクトデザインの専門性・データ分析の能力は、 一人で全て身につけるのはかなり時間がかかりそう。
「自分のスキル・知識」と「行動変容デザインに必要なもの」のギャップを見てみる。 自分が本書を読んだ際のスキル・知識は以下である。
- 学部研究で触れた程度の行動経済学の知識(行動研究)
- 業務 1~2 年程度の Web 開発(プロダクトデザインの専門性)
- 良し悪しの判断基準が感覚的な UX の知識(プロダクトデザインの専門性)
- 小粒程度の統計スキル(データ分析)
まだまだ身についたとは言えない要素ばかり。色々加味すると、この中で直近手を付けるべきなのは、データ分析だと思う。 その理由は、データを分析し、知見を得る能力が無いと、「データに基づいたデザイン」ができないと考えられるからである。
「データに基づいたデザイン」こそ、「行動変容デザイン」と言っても過言ではないのかなと感じたりした。
どういったスキル・知識を持って、どのように組み込めばよいのかというのは書籍を通して理解できたため、達成できたといえる。
行動変容を促すデザインの理論的な背景知識を得る
ざっと読んだ印象では、ビジネス応用としてのプロダクトにフォーカスしている。
人間というのは元来こういうもので…といった心理学・経済学的な説明の詳細は他書に任せられているため、他書を当たるのがよい。
若干求めた内容が違ったので、達成できていない。ただ、参考書籍として色々挙げられていたので、それらを当たろうと思う。
行動変容を促すプロダクト
行動変容を促すプロダクトは面白い。巻末には日本版オリジナルの行動変容を促すプロダクトがいくつか紹介されていた。 そこには、マネーフォワード ME・あすけん・CureApp など知っている企業が取り上げられていた。
- 「いつのまにか貯金」「ボタン1つで支払い処理」という便利な世の中へ~設立1周年を迎えた ”Money Forward Lab” の「これまで」と「これから」~|マネーフォワード公式 note
- どこまで使える?日本で初めて薬事承認を取得した世界初のニコチン依存症治療用アプリ「CureApp SC」|@DIME アットダイム
- 『あすけん』とは|生活習慣病に対するオンライン保健指導サービスの構築と行動変容への検証研究| IOT 等活用行動変容研究事業
ユーザ体験を行動経済学・心理学の観点から考えているプロダクトはいまだ数少ないと思う。 そういうプロダクト開発は、機能実装にも理論的な納得感があって楽しそうだと感じた。
研究とビジネス応用
所属している研究室の活動にて、よく CHI や UIST などの論文を読んでいる。当然だが、システムを提案する論文では、関連研究や手法の点で、がっつりと理論背景が書かれている。
行動変容デザインを再現したプロダクトに積極的に触れる機会を持ちたいと思った。紹介されたプロダクトに拠るものだが、医療・スポーツ・プロダクティビティ・金融分野が多そうだと感じる。
何かおすすめアプリがあれば、教えて下さい。
終わりに
UX の一歩先にあるのが、行動を変えるデザインなのかなと思いました。
心理学や行動経済学の知見を利用して、プロダクトをデザイン(開発)したい方は読まれると学びがありそうです。
下記の書籍公式ページから、「行動を変えるデザインツールキット」というのが無料でダウンロードできます(Google Drive で pdf が公開されている形)。
行動を変えるデザイン - 心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する
このデザインツールキットはプロダクトデザインの際に有用そうだなと感じました。
ぜひ書籍を読んでほしいですが、時間がなければデザインツールキットの方を眺めてみてください。